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2011/6/1 新エネルギー三本柱

初回のレポートは、各エネルギーの各論に入る前に、新エネルギーについてのまとめを行い、結果的に将来のために開発が必要な三本柱を選定しました。

 

24時間の定常発電

天候に左右されず、24時間定常発電できる発電方法を選定するのは絶対条件です。24時間発電可能な、火力、原子力、地熱、核融合の4つを分析します。

火力での大事故は周辺火災が想定されるのみで、安全性の高い発電方法であることはこれまでの歴史から自明です。しかし、限りある化石燃料を使用すること、そして、CO2を排出し、そのCO2を除去する技術も困難な現状から、将来性はBとしました。

原子力は重大事故がなければ、火力同様の安定性の高い発電方法でした。しかし、プルトニウムを含む高レベル廃棄物の再処理処理技術に見通しが得られていないだけでなく、高速増殖炉(もんじゅ)の発電実証にも見通しが得られていないことから、将来性は低く評価しました。現状では、CO2排出が許される量まで火力を使い、残りは原発で発電が妥当と思います。また国内で貯蔵できる使用済核燃料の量にも限界があるため、原発の使用年数は使用済核燃料の量にも依存します。

地熱は火山大国の日本では可能性は高いと思う方が多と思いますが、実は発電出力はとても低い。重ねて、地熱発電に適した場所は、最終的はボーリング調査を行う必要があり、最適な場所を選択する確率は、温泉を掘り当てる事に相当する確率です。

核融合炉は、核という言葉がイメージを悪くしていますが、実際の原理は全く原発とは異なります。発電原理はWebページで確認頂くとし、燃料が無尽蔵、事故時も発電が安全に停止するのみと、メリットの大きさから将来性は極めて高い発電法です。低レベル放射性廃棄物は生じますが、福島原発のような臨界という概念がありません。問題は、今は核融合の実験炉を国際的に建設中という段階でして、発電炉の建設時期が遠いことです。

結論は、核融合炉が将来一番有望となりますが、核融合発電炉ができるまでは、火力をつなぎ発電として利用を続け、火力によるCO2排出量の許容オーバー分は原発を使用することです(但し、使用年数は使用済核燃料の貯蔵許容量に依存)。言い換えると、化石燃料が無くなる前、もしくは原発はNO!という方は、核融合を発電炉として成立させることが重要となります。

 

時間帯制限付き発電

次は、天候に左右されるため、発電を行う時間帯が限られる発電法を整理します。当面は定常発電を火力と原発に頼ることから、クリーンな発電であれば、天候に左右される時間帯制限付の発電法も受け入れるべきと考えます。

クリーンと言えば、自然エネルギーの太陽光発電です。発電の現状はWebサイトに掲載しましたが、太陽光発電は時間帯、天候等に大きく左右されるだけでなく、特に夏場では電気が必要な15時以降に一気に発電量が下がってしまい、日照時間=発電量の方程式が成立しないという問題もあります。しかし、太陽が一番高い位置にある時間帯の発電量は高く、太陽光パネルに使用される半導体の技術革新や、リチウムイオン電池の蓄電池との組み合わせにより、将来的には有望な発電方法です(但し、曇り、雨天は除きます)。

対して、同じ自然エネルギーでも、風力は日本では適した土地が少なく、生態系への影響も大きい発電法です。また、水力もダムを建設する必要があり、現在の数より増やすことは困難です。風力、水力に関しては、今後の伸び率は低いと予想できます。

化石燃料を使用しますが、燃料電池(エネファーム)という発電法もあります。しかし、材料に白金(プラチナ)という高価な貴金属を使用することから、価格面に問題があります。更に、燃料電池は、発電と同時にお湯も沸かすことで発電効率を上げているため、1日に必要なお湯が貯まると発電が停止する(燃料電池で発電のみの場合は、火力発電所の方が効率良いため、発電のみで燃料電池は稼働しないシステムになっている)という欠点があります。また、リチウムイオン電池の蓄電池技術が確立すると、燃料電池のメリットは大きく低下することも課題です。

結論は、時間帯制限付発電としては、太陽光が一番有望で、且つリチウムイオン電池の蓄電池とのセットでの設置が必要となります。太陽光発電に耐えられる送電網の設備整備も重要です。

 

蓄電

24時間の定常発電では夜間に発生する余剰電力の有効活用が求められます。また、時間帯制限付発電では発電量が天候に左右されるという欠点の対応が求められます。これらの要求を満たすものが蓄電です。

揚水発電は、人工的に作った水力発電です。余剰電力の多い夜間に水を上流にくみ上げ、昼間の電気消費量が多い時間帯に、くみ上げた水を利用して水力発電を行います。しかし、稼働している原発の数が少なくなると夜間の余剰電力が不足するため、昼間に揚水発電を使用したい場合、夜間にCO2を排出する火力発電をフル稼働しなければなりません。本来、揚水発電は余剰電力の有効活用を行うための発電のため、緊急時のみ使用することが理想です。

結論は、リチウムイオン電池の蓄電池が将来的に有望です。今後は、太陽光発電と連動した蓄電池、スマートグリッド対応の蓄電池が重要となるため、蓄電池も更なる技術革新が必要な分野です。

 

星野毅が考える新エネルギー三本柱

以上、すべてのエネルギーを多角的に分析すると、これから技術開発を推進すべき分野が明確となりました。

24時間の定常発電は核融合(つなぎ発電は火力、CO2の排出量の許容オーバー分は原発(但し、使用年数は使用済核燃料の貯蔵許容量に依存))、時間制限付発電は自然エネルギーの有効活用が技術革新で期待できる太陽光、そして、24時間の定常発電と時間帯制限付発電の両者に必要な蓄電としてはリチウムイオン電池の蓄電池。

これらは、すべての技術が確立して初めて成立するため、この三本柱は、まず集中的に研究開発を行い、技術革新を期待します。現実的には技術革新まで時間を要するため、現状の発電を維持しつつ、段階的に、原発、火力依存度を下げるというロードマップになると思います。

 

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